旅先で出会うお気に入りのお店は、料理のおいしさや飲み物の完成度だけでは決まりません。
空間との調和、流れる空気、出会った人と接した記憶。
様々な要素の組み合わせによって印象に残った、「また思い出したくなる場所」を記録しています。
今回訪れたのは、ニュージーランド・クイーンズタウンにある【全黒(Zenkuro)】です。

訪問の経緯
クイーンズタウンで“日本酒”という意外性
現地のご飯を食べ、お酒を飲むことが、旅の大きな楽しみだという方も多いのではないでしょうか。
ニュージーランドならビールもたくさんありますし、クイーンズタウンを有するセントラル・オタゴ地方は、ワインの名産地。
ワイナリーを巡るツアーも観光の目玉のひとつです。
そんなクイーンズタウンで日本酒・・・?
ニュージーランド旅行前に「おいしいお酒はないかな」と
ネットで調べていたとき、
偶然目にしたのが全黒の存在でした。
もともとクイーンズタウンに行く予定があり、場所を調べてみると中心地からも近い。
旅程的にも無理なく行けそう。
「これは絶対に行って、日本に持ち帰らなければ!!!」
と、武者ぶるいしました。
珍しいもの好きの両親に
「ニュージーランドでニュージーランド人が作った日本酒やで(ドヤァ)」
と一緒に飲む日を想像して、
行く前からニヤニヤしていました。
いざ、逆輸入。
NZ初にして唯一の日本酒蔵「全黒(Zenkuro)」とは
蔵元の基本情報(場所・設立背景)
全黒は、ニュージーランド南島・クイーンズタウンにて、
ニュージーランド初にして唯一の日本酒蔵として、手づくりの純米酒を製造・販売されています。
日本に留学経験があり、日本文化に造詣の深いニュージーランド人のご主人が杜氏を務め、
長年ニュージーランドに住まれている日本人の奥様と、
複数名の発起人と共に、2015年から本格的な酒造りをスタート。
日本やカナダの蔵元で一から日本酒づくりを学ばれ、現在ではニュージーランド国内の多くのレストランで提供されています。
10年続けられていることの凄さと、
「唯一」であり続けている点に、
他の追随を許さない圧倒的なブランド力を感じます。
なぜニュージーランドで日本酒なのか
創業当時、ニュージーランドではあまりいい日本酒が流通していなかったそうです。
「日本酒の本当の美味しさを広めたい」
そんな思いから始められた酒造り。
未成熟なマーケットに参入し、
マーケットそのものを育てていく覚悟と、
「ALL BLACKS(=全黒)」としてニュージーランド代表を名乗る潔さに、
痺れずにはいられません。
クイーンズタウンの空気と蔵元の空間
立地と周辺の雰囲気
クイーンズタウンは、
美しい湖と山々に囲まれた自然豊かな場所でありながら、南島随一のリゾート地。
中心部にはレストランやバーなどが立ち並び、観光客で賑わっています。
全黒は、中心部から徒歩で30分ほどの静かなところにありました。
サザンアルプスから流れ出る、澄んだ水が酒造りに使われています。
店内・テイスティングスペースの印象

事前予約なしで伺ったため、
どんな空間なのか少し緊張していました。
到着すると、ちょうど奥様が外にいらっしゃり、やさしく店内へ案内してくださりました。
こぢんまりとした店内の中央には、カウンターテーブル。
試飲可能か伺うと、ずらりとお酒を並べてくださいました。
“観光地の蔵元”ではない居心地の良さ
訪問したのは、ニュージーランド観光4日目。
正直なところ、
観光ビジネスとしてのワイン体験に少し疲れていた頃でした。
スリランカでの紅茶探しでも、
同じような思いをしたことがあります。
観光地では、求めている「本質」とズレてしまうことがある。
有名でも品質はまちまちで、本当にいいものを見つけるのは意外と難しい。
そんな中、全黒では一対一で丁寧に対応してくださり、素人の取り留めもない質問にも、一つひとつ真摯に答えてくださいました。
オーナーご夫婦との出会いとテイスティング体験
対応してくださったオーナーご夫婦について

テイスティング中は奥様が対応してくださり、途中で出来立ての無ろ過生原酒を持ってきてくださったご主人も、終盤にはお隣の醸造所からショップに来てくださいました。
お二人とも日本語で話してくださり、何より温かいお人柄が印象的。
営業トークではなく、酒造りへの情熱が自然と伝わってきました。
訪れたのは2025年12月30日の夕方。
「今年最後のお客さんです」と
にこっと言ってくださったのが忘れられません。
ほぼ全種テイスティングして感じたこと
全部うまい。
究極の食中酒とは、まさにこのこと。
お酒単体でも美味しく、どんな料理にも寄り添いそうな、万能選手が揃っていました。
テイスティングした日本酒の味わいメモ
印象に残った銘柄
雫搾り 純米吟醸
最初にいただき、大いに感動しました。
発酵したもろみを入れた袋を吊るし、重力だけで濾すという贅沢な圧搾法で作られたお酒。
その洗練されたお味は、「なんかすっごく綺麗なお水を飲んでるのかな?」と錯覚するような、スッと入ってくる感じです。
原料となる水の良さもあるのかと思いますが、あまりの美味しさに、もしニュージーランドの方がこの味を日本酒のスタンダードだと思ってしまうと、日本に来てがっかりしてしまうんじゃないかと心配するレベルです。
ワカティプ スリーピング ジャイアント 特別純米
こちらは圧搾タンクで、地元の川の石(!)を使って圧搾したお酒。
雫搾りに比べて、どっしりした感じです。
味のしっかりしたお料理に合いそうな、風味豊かな味わいです。
現地で人気のあるお酒の一つだそうです。
ふるさと 純米
奥様の出身地である福岡のお米を使ったお酒。
他のお酒は基本的には富山県産の日本酒米を使われているとおっしゃっていましたが、こちらはふるさとのお米。
なんだか優しい味わいがしたような。
アオラキ 純米大吟醸
これは純米大吟醸です。スーパープレミアムグレードです。ぐうの音も出ません。
柔らかい口あたりで、フルーティーですっきり。
しっかり冷やしてお魚に合わせたい感じです。
『白雲』にごり 特別純米
濾過を軽めに、敢えて澱を残したにごり酒。
にごり酒をあまり飲んだことがないのでどぶろくを想像してしまったのですが、全然違いました。
見た目よりも飲みやすく、新しい世界の扉が開きました。
やや辛口で、スパイシーな料理、豚バラやラムチョップなど脂身の多い料理と合うそうです。
合わせてみたい!次巡り会えたら買いたいです。
全黒 ぷらむ酒
キーウィ人気ナンバーワン!現地で採れたプラムと、マヌカハニーがちょこっと入ったお酒。
まず色がきれい。そして酸味とほのかな甘味があって、日本酒入門としてとても飲みやすいお酒だと感じました。
飲みやすいのでついごくごくいってしまいそうですが、アルコール度数はしっかり13.5%。
これは絶対買って帰ろうと1番に決めました。ハーフボトルがあるのが大変ありがたい。
Untouched -無ろ過 生 原酒
無ろ過、無加水、無希釈。火入れされていないフレッシュな原酒。
ご主人が試飲用に持ってきてくださったものは、もはや瓶詰め前のもので、フレッシュ中のフレッシュ。
もう私、その時点でほぼ決めてました。
買います。
スペースドラゴン 純米吟醸 ZENKURO × TAKAHIRoK
これはまじやばい卍(語彙)
ニュージーランドでワインを生産されている日本人の方とのコラボでつくられたお酒。
なんと、日本酒がワイン樽の中で寝かされ、葡萄の香りを纏っています。
想像以上にピノノワール・・!
そしてその希少性が購買意欲を掻き立てるのです。
最初につくられた樽からは360本、私が購入した2つ目の樽から生産されたものは350本という限定酒。
買います。
“十”TEN 純米大吟醸
これがまたすごいのです。涙抜きには語れない(大袈裟)。
10周年を記念して、過去の純米大吟醸酒をブレンドしてつくられたお酒。
雑味ゼロ。
10年分のお酒が混ざっているので、その中には古酒もあるわけですが、絶妙なバランスで組み合わされていてとても飲みやすかったです。
驚きの限定110本。流石に手が出ませんでした。
ニュージーランドらしさ/日本酒らしさのバランス
本気の日本酒づくりをされています。
小規模生産だからこそできる、手作業による丁寧なお酒です。
中には、ぷらむ酒のように地元の食材を使ったものもあったり、スペースドラゴンのように国を代表する名産品であるワインとコラボしたものもあったり、ニュージーランドらしさを掛け合わせつつ、決して日本酒らしさも失われておらず、まさにニュージーランドと日本の架け橋でした。
持ち帰った日本酒と自宅でのフードペアリング
購入した銘柄と選んだ理由
ほぼ書いてますが、以下の銘柄を購入しました。
- Untouched -無ろ過 生 原酒
- スペースドラゴン 純米吟醸 ZENKURO × TAKAHIRoK
- ぷらむ酒(ハーフボトル)
- 全白 Sake Pilsner(地元のブルワリーとのコラボ)
味だけで選ぶと、全部買うことになります。(迫真)
持ち帰りの都合でたくさんは買えないので、「ここでしか買えない感」を重視し、お土産でもあるのでニュージーランド感があるものも選びました。
本当は雫搾りとスリーピングジャイアントも買って飲み比べがしたかったです。またの機会に。
合わせた料理
無ろ過生原酒は、どんな和食にも合う確信がありました。
ニュージーランドから帰国した1月4日、ほのかに新年気分が残る中、黒豆・なます・鴨鍋などと共にいただきました。最高でした。
どれもお料理に合わせやすいとは思ってましたが、ぷらむ酒がニュージーランドで人気と聞いて、現地ではどんな合わせ方をするのかとても興味がありましたので、いただいたお名刺を見て奥様にメールを送ってみました。
するとなんとご親切に教えてくださったのです。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
食事 × 飲み物 × 空間で振り返る「全黒」
食事(どんな料理と合わせたくなるか)
和食、洋食、肉、魚、デザート 幅広いです。
飲み物(日本酒としての個性)
万能食中酒であることが究極の個性と感じました。
きれいな水と丁寧な手仕事で洗練された味で、特別な日に飲みたいお酒です。
空間(記憶に残る体験として)
とても楽しく、味覚と好奇心が満たされる場所でした。
観光シーズン真っ盛りのクイーンズタウンでは、アジア人観光客は歓迎されてないと感じることもありました。
冷えた心を温めてもらいました。笑
こんな人におすすめ
ワイナリー観光に飽きた人
ワインも本当においしいです。テイスティングなしでスーパーで買ったワインも、どれもおいしかったです。
飽きたら珍しいニュージーランド産の日本酒もいかがですか?
クイーンズタウンで少し違う体験をしたい人
日本の外から見る日本を覗けます。
旅の余韻を持ち帰りたい人
帰ってからも日本の料理と合わせて楽しむことができます。
お土産話が満開に咲きます。
ショップ情報・訪問時のメモ
住所/アクセス
【住所】19 Repco Boulevard, Queenstown 9300 ニュージーランド
【クイーンズタウン中心部からのアクセス】
約2km
徒歩30分、車5分
【営業時間】
月〜金曜日:10時〜16時 / 土日:休み
テイスティング可否・予約の有無
「◯種類で△ドル」というようなテイスティングメニューがあるわけではありません。
気になるお酒について、試飲の可否を確認されるのが良いかと思います。
今回、事前の連絡なくお伺いしましたが、たまたま店内が空いていたのでゆっくりご対応いただけたのかもしれません。
祝日や年末年始など、休業される場合もあるかと思いますので、確実に訪問されたい方は事前に連絡されてはいかがでしょうか。
注意点(持ち帰りなど)
日本入国時の、酒類の免税範囲はご自身でご確認ください。
(免税範囲を超えても、かかる税金はそんなに高くないと伺いました)
私は海外旅行に行く時必ず、ビン類持ち帰り用にプチプチとジップロックを持っていきます。
全黒ではバブルバッグいりますか?と聞いてくださり、丁寧に包んでくださり、助かりました。
店内ではお酒を冷蔵されていますが、持ち帰りや保管の際は常温で問題ないということです。
ただし、無ろ過生原酒だけは常温で置いておくと発酵が進んでしまうので、冷蔵がおすすめということでした。
ニュージーランド旅行中、移動のたびに冷蔵庫に入れて大切に日本まで持ち帰り、美味しくいただきました。
日本酒にも色々種類がありますから、なかなか好みに合うものに巡り合うのは難しいですよね。
まさか遠く離れた南半球の国で出会えるなんて、とてもラッキーでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
機会がありましたら、ぜひ訪れてみてください。



